アートメイクに法改正はある?刺青の法規制との違いは? | アートメイクスクール

アートメイクに法改正はある?刺青の法規制との違いは?

アートメイク知識

日本においてアートメイクは医療行為

アートメイクは医師法における「医行為(医療行為)」に該当するので、医師免許のない人、若しくは医師の監督下ではない看護師が施術をすることは医師法違反となります。

アートメイクに関する私的なライセンスは多々ありますが、第一条件として医師免許もしくは看護師資格を有していることが前提になります。

アートメイクが医療行為とされる背景には、施術自体が人の皮膚に針を用いて色素を注入する行為であり、人の皮膚組織の損傷を伴うことが挙げられます。また、痛みを軽減する目的で麻酔が用いられるため、人の身体に具体的な危険を及ぼす可能性のある行為としてみなされます。

医師法第17条について

アートメイクの法律的制限に関わる医師法について詳しく解説しています。

法律の医師法第17条では「医師でなければ、医業をなしてはならない。」とされています。医業とは、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ、人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為のことをさします。

ただし、この医師法の文面には「アートメイクが医業に含まれる」若しくは「一般人のアートメイク施術を禁じる」等の記述はありません。日本の法律は度々このように曖昧な文面で発布されます。これは時代にあった解釈を適用するためです。解釈は法改正によってではなく「通達」という形で発表されます。

厚労省通達?

平成13年に厚生労働省により、アートメイクの医業認定に関する通達が交付されました。具体的には「針先に色素を付けながら、皮膚表面に墨等の色素を入れる行為」は医業と解釈されるようになり、医師法が適用されることになり無資格者の施術が違法となりました。

○医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて(部分省略)

(平成13年11月8日)

(医政医発第105号)(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局医事課長通知)

第1 脱毛行為等に対する医師法の適用

以下に示す行為は、医師が行うのでなければ保健衛生上危害の生ずるおそれのある行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反すること。

~部分略~

(2) 針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為

これにより、刺青の他、アートメイクも医療行為とされる事になり、サロンや美容院でのアートメイク施術が取り締まられるようになりました。

通達の題名は脱毛行為となっていますが、内容を確認すると「針先に色素を付けながら、皮膚表面に墨等の色素を入れる行為」も含まれていました。

「業として」の意味について

アートメイクにおける業としての解釈は、3つの要因が挙げられます。

・不特定多数人を対象とすること
・反覆継続の意志をもっていること
・対価をとること

免許・資格のないものがアートメイクを上記のような業として施術を行うと医師法違反に当たります。

ただ、医師の管轄のもと看護師が施術を行うという運営になっていることが殆どで、その場合は合法とされています。

そのため、医師が常駐していないクリニックで看護師が施術をすることやサロンや美容室で施術を行った場合処分の対象になります。

違反した場合の処分

日本で無資格者がアートメイク施術を業として行った場合の処分は、「無資格者のアートメークは医師法17条違反で法定刑は3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科」となります。

・法定刑3年以下の懲役
・100万円以下の罰金
・または両方

上記のような処分が下されます。

各国のアートメイクの法規制は?

日本以外の海外でのアートメイクの法規制はどうなっているのでしょう。各国の法規制についてご紹介します。

日本ではアートメイクやタトゥーは医療行為とみなされていますが、外国のほとんどの国では医療行為とはみなされていません。

そのため、エステサロンや美容サロンでも受けられるので、気軽に利用している方が多く見られます。

日本と海外では安全基準が異なり、日本は厳しい基準を設けているため、アートメイクを医療行為としています。

アートメイクが多く行われている韓国では医療行為とされていますが、2021年中に美容師資格を保持していればアートメイク施術ができるように緩和されました。

アメリカでは州によって法律が異なりますが、医師や看護師でなければ施術できないという法律は少なく、ある一定の基準を満たせば資格や免許を持っていなくても施術できます。

日本は安全性や健康被害に遭うことなどを考慮して、かなり高いハードルを設けています。

刺青の彫り師は医師免許なしでも営業できる?

刺青も「針先に色素を付けながら、皮膚表面に墨等の色素を入れる行為」に当たるため法的にみると医療行為になり、アートメイクと施術内容に大きな差はありません。

しかし、アートメイクの厳しい法規制とは対照的に、刺青については医師法第17条の適用がうやむやにされてきました。

刺青は法が整う前から風俗として施されていたり、伝統芸能として技術的にも世界的に誇れるものであるといった背景がその理由のひとつです。アートメイクと同様、刺青も医療行為になるため医師免許なしでは営業できないことに便宜上はなっていましたが、実際には医師免許を持たない彫師も多く存在しているのが現状です。

最高裁による無罪判決

2020年9月、大阪の医師免許をもたない刺青師の営業が、最高裁で認められたケースがありました。

医師免許を持たず客にタトゥー施術を行っていた男性が、医師法に違反するものとして起訴された刑事事件です。

裁判では、一審では罰金刑を言い渡しましたが、二審では「装飾的、美術的な意義がある社会的な習俗という実態があり、医療目的ではないことは明らかだ」などとして、罪の成立を認めませんでした。

そして、最高裁ではタトゥーの法的解釈について「医行為にあたるかどうかにつき医療及び保健指導に属する行為か否かを問うべきでない」として決着をつけました。

つまり、タトゥーは医業に当てはまらないとの法的解釈が新たになされ、無資格者のタトゥー施術は取り締まりの対象にならないとされたのです。この背景には医師免許保持者しかタトゥーを施術できないとすることは、つまりタトゥー施術に対する需要が満たされることのない社会を強制的に作出し、国民が享受し得る福利の最大化を妨げることにもなってしまうという事情があるようです。

アートメイクの法改正はある?

アートメイクの法改正については、刺青の最高裁の判決がアートメイクにも準用される可能性は、0ではないと言えるでしょう。

判決が出たのが2020年9月と日が浅いため、これから改正・もしくは解釈が変更される余地はあるかと思われます。

ただ、法改正は長期間に及ぶため、改正されることを期待して医師免許や看護師資格を取らずにアートメイクのライセンスだけを取るようなことは避けた方がいいでしょう。また、日本の刺青には現行の法律が整えられる前から風俗として行われていたという背景がありますがアートメイクは比較的新しい技術であるためやや事情が異なります。

法改正がされるのか、されるとしてもいつになるのか定かではないため、然るべき方法で施術をする、施術者になる場合は現行の法解釈に従う方が安全でしょう。

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